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■退行催眠療法

 トラウマを排除するためには、無意識に抑圧されている幼少時の心的苦痛と、今の精神的苦しみや心の病との関係を分析することが重要になる。「これを可能とするのが退行催眠です。退行催眠では過去の経験を思い出させ、ときには感情を伴った再体験をさせます。思い出させた幼少期の出来事の中から「現在に影響を及ぼしている、トラウマとの関連を探るのです」と井手先生は語る。
 催眠術に多少興味がある人であれば「退行催眠」の名を聞いたことことがあるだろう。今は一般滝になった退行催眠だが、これは井手先生が、「たけしの万物創世紀」というテレビ番組で初めて全国的に紹介したことはご存じだろうか?
 先生は退行催眠の第一人者であり、この技術を長く提唱してきたのである。
 退行催眠の技法にかかわらず、催眠状態では、普段は思い出すことがない抑圧された記憶が思いだしやすくなるという。しかし、催眠状態に導き、現在の苦痛や心の病の原因になっている出来事を引き出そうとしても、いつも都合よく無意識の中に抑圧された、それらの“原因となる記憶(トラウマ)”を簡単に引き出せるとは限らない。
 「そこで、マインド・サイエンスでは、催眠感受性(催眠にどのように反応するかの特性)の個人差を埋めるため、催眠状態で容易に引き出せる相談者の記憶にのみ頼るのことなく、心理療法による誘導で、トラウマとなった出来事の記憶へと導いていきます。ここに心理療法の重要性があります」(井手先生)。
 第一人者だけあって、退行催眠ですべてが解決できるとは考えていない。その限界を知り対処方法も用意しているのである。対処方法の一つが心理療法だ。「あまりにも強い抑圧のために、そう簡単には原因となる記憶の意識化ができない場合があります。幼児期の出来事が、本人にそれほど大きな問題として自覚されていない場合、または、他の人も自分と似たり寄ったりだろうと意識上は考えて成長してきた場合などは、退行催眠中に原因となる記憶がよみがえったとしても、そのことが無視され報告されないことがよくあります」(井手先生)。
 こういったケースでは、相談者の心の苦しみの背後に潜む原因をあらかじめ心理療法としてのカウンセリングの中で見出しておいて、その裏付けを問うような誘導も必要だという。

■前世療法

 心の病の治療で前世療法が利用されるようになってきている。井手先生も「15年ほど前から、前世療法を希望される方が増えてきた」と語る。
 催眠療法を行っていると、現世の問題だけではどうしても症状を改善できにくい場合がある。そのような場合、幼児期の過去に戻る(退行)だけではなく、生まれる前の人生にまで戻って行き、その時代の人生を見つめていくという催眠療法が前世療法である。「生まれる前の人生の問題を解決してやることで、どんなにひどい特殊な症状もあっさりと治っていくことがあります。驚くほどの効果がみられることがあります」(井手先生)。前世療法だからといって、外国に生まれていたとしても、その国の言葉でしゃべることはないし、その当時の人物になりきる必要もない。当時の自分を今の自分がしっかりと見つめ、観察しながら多くのことを理解することが重要となる。いつの頃に戻っていても、意識はちゃんとあり、特別な場合を除いてすべてのことを自分で覚えている。
 「前世療法は、催眠療法の一分野として、またはテクニックとして研究・実践していく価値があります。心の病を治すにおいて、この方法によってしか治らない症状もあるからです」と、先生は前世療法の有効性を認める。


■自己催眠の価値

 自己催眠も耳になじみのある言葉だろう。「自己催眠は自分を自分で催眠状態に導くテクニックであり、その催眠状態(トランス状態)を利用して、暗示を与え、自分をコントローすることです。もしかすると、多少知識がある方はすぐに自律訓練法を頭に描かれるかもしれません。しかし、自律訓練法は時間がかかってまどろっこしいのです。自己催眠は、時間をかけずに瞬時に行えるようになることが理想でしょう。また、心の病を治すために、自己催眠をマスターすることは、早く治すことができ、治った後はさらなる自己強化や自己向上に役立たせることができます」と、井手先生は強調する。
 他者催眠と違い、自己催眠はいつでもどこでも自分の意思で好きなだけ催眠状態を作り出せるので、必要な時自己暗示を与え潜在能力(無意識の力)を引き出し活用することができる。しかも、願望どおりに、行動や生き方、生活や癖などをコントロールできなければならないという。「マインド・サイエンスでは、一般的な自己催眠の概念を越えて、本当に役立つ自己催眠の指導を行っています。私たちはもっともっと満たされた幸運な人生を送ることができます。いろいろな夢を叶え叶えることができるのです!」と、先生は私たちを励ます。