第5章 P.142~本文の一部の紹介です。出版社との契約関係で、全部を掲載できないことをご理解ください。
購読していただき、活用していただければ嬉しく思います。 著者:井手無動
眠りの中のあなたの世界
睡眠中は脳の中で思考がストップするわけではありません。眠りに入ると脳全体がシャットダウンするわけではありません。部分的に休息はしますが、脳は眠らないのです。
眠っているとき、夢を見るというのもその証拠です。この夢について考えてみましょう。
夢を見ている睡眠中は、あなたが変わるために必要な秘密が潜んでいるのです。
フロイトによれば、「意識下には、意識にのぼることのない生得的な情報に加えて、抑え込まれた想念が潜んでいる。それらは受け入れがたい記憶や願望、不安であるために無意識の領域に追いやられ、そこに閉じ込められている想念だ」と言っています。
これはどういうことでしょう。あなたが生まれつきに持っている情報といえば、DNAの情報でしょう。それはあなたの気質であり、あなたが生きていく上でのスキルであり、あなたが置かれている環境要因に対して、どのような影響を受けるかという反応・適応傾向でもあるのです。そうした生活環境の中で、あなたが受け入れがたい様々な想念は無意識の領域に閉じ込められていると言っているのです。
いわゆる精神的な抑圧という状態です。
ここで、“夢”というものを見つめてみましょう。
“夢”の定義について、睡眠中のあらゆる段階で起きる精神活動を夢と呼ぶ広義な立場もありますが、ここでは、一般的に夢を見たと想起されるような「目が覚めてから語ることのできる睡眠中の精神的な体験」を夢と呼ぶことにします。
夢は見ている途中か、見た直後に目が覚めなければ、たいがい忘れてしまうものですが、覚えているかどうかに関わらず、夢は私たちの起きているときの活動に影響を及ぼすことも分かってきているのです。
最近の脳科学の研究の画期的な進歩で夢の実態が解明されていく中で、一部は修正されることはあっても、フロイト、ユングそれぞれの理論のかなりの部分は、科学的に実証されてきているのです。
夢を見ているときの睡眠状態をレム睡眠と呼びますが、レム期には閉じたまぶたの下で眼球が激しく動くので、眠っている人が夢を見ているかどうか観察すればすぐに分かります。
私たちはどうのようにして、なぜ夢を見るのかということや、レム期以外の睡眠時においても、意識されることがないまま“広義の夢”を見ていることも分かってきました。こうしたレム期以外の夢は、一般的な夢と同じように重要な、高次の精神活動にも触れることになるとわかっています。私たちが眠っているとき、意識しないまま寝言を言っているときがありますが、寝言は睡眠中のどの段階でもいうのです。このことから、レム期以外でも夢を見ていることが理解できると思います。
睡眠という夜ごとなされている活動で、どのような働きかけが私たちの意識のあずかり知らぬままに起こっているのか。
それはあなたの自己イメージと外界に対する働きかけに大きな影響をおよぼす無視できない重要な時間だったのです。
夢への潜入
夢の世界に関する知識をもう少し深く見つめてみましょう。
夢がリアルに見え、感じられるのはなぜかも解明されてきました。その説明は、覚醒中の意識の働きについても深い洞察をもたらしてくれます。
あなたの脳がだんだんと深い眠りの世界へと導かれると、脳は外界からの情報を処理する必要がないため、起きていた時の新たな経験を記憶に統合するなど、別の重要な任務に専念できるのです。この状態をパソコンでたとえればネットに繋がっていないオフライン状態といえるでしょう。このような睡眠中に行われる脳内での作業が、起きているときの私たちの行動を導く役目をしていることもわかってきました。さらに、夢の内容から私たちの心理の奥底にある関心事や感情について貴重な情報を引き出せることも明らかになっているのです。
それゆえに、夢の世界や脳のオフラインの世界へと潜入して好きなように脳内をいじくりたいと思いませんか。それができれば、夢の中での自己イメージを変え、現実の自己を変えることが可能なはずです。結論から先に言えば、それは可能です。
その前に、夢の世界をもう少し知ってください。