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他者催眠術の習得

私の所には遠方から催眠術を習いに来る方が多くいます。なぜわざわざ遠い所から来られるのかについては、意昧があります。それは、束京、大阪など都会には催眠術を教えている所はたくさんあっても、短期間に様々な応用ができるようには、なかなか教えてもらえないという現状があります。

 私は催眠の本質から教えていきますから、すぐに催眠をかけることができるようになるばかりか、催眠術の本を読んで自分の個性で応用したり、もっとこうした方がよいと批判したりできるようになります。

 人がなぜ催眠にかかるのかという本質を理解できれば、催眠術の習得はそんなに難しくはないのです。むしろなぜ人は催眠をかけることが難しいと思い込んでいるのだろうという気持ちになります。

 私は子供の頃から環境的に恵まれてはいましたが、時には悪ガキにいじ’めを受け、逃げるときがありました。初めは立ち向かっても勝てない相手だかち、逃げていてもしつこく追いかけてきます。当時から変なプライドがあった私は、相手の横暴な態度が許せず、逃げるのをやめ、相手に向き合い「やめろ!」と叫びます。するとどうしたものか、あれほど怒り狂っていた相手が、ピタッと動かなくなり立ちすくんでしまうのです。私は敢えてその横を堂々と通り過ぎて立ち去ります。こんなことを何回か経験すると、我ながら不思議な現象に関心を寄せるようになりました。

 私がまだ二十代後半の頃、三回にわたり、人の潜在能力についての講演を頼まれたことがありました。そこに集まった人々は、自営業者または会社の部長クラス以上という人たちで、定期的にこのような講演を依頼して勉強会を開いている方々でした。私は催眠という現象を理解していただき、ひいては心の力というものを経営に活用して欲しいと講演内容を考えていました。

 ところが、第一回目の講演のとき、なんとなく私を茶化すような質問を投げかけてくる四十過ぎの男性がいます。初めのうちはそれに対しまじめに答えていましたが、だんだんと腹が立つばかりか、このままだと二回、三回の講演ができなくなる、できても参加者が来ないと講演を依頼してくれた方に申し訳ないという気持ちが湧き起こってきました。そこで私はその男性を直視して語りかけました。「あなたは私が□ばっかりで、催眠などかけることができない、少なくともあなたはかからないと思っているようですね。でも、もうあなたはそこから動くこともどうすることもできませんよ。動けると思うんだったら試して御覧なさい。私はあなたが催眠という力を身にしみて分かるまでは、あなたを許さない」とはっきり断言しました。

 その男性にしてみれば、四十歳を過ぎ社会でもまれてきているだけに、まだ三十前の若造が、何を分かったことを言っているんだという感じで茶化していたのでしょう。しかし、彼は動かなくなった自分の身体をどうしようもないばかりか、皆の前で恥をかかせられ困っています。私も当時、若気の至りで、皆の前で、その男性にいろいろなことを命令し、徹底的に恥をかかせました。その男性は「もうやめてくれ、自分が悪かった、分かっていなかった」とまじめに謝りました。それで許したのですが、その体験を通し私は長年探求してきた本物の瞬間催眠(術)のコツを開眼しました。

 明治時代から発行されているどんな催眠術の本をひも解いても、瞬間催眠術として説明されているものは、すでに条件づけ(前もって催眠に何度も入れておいて催眠にすぐに入りやすくしていること)されている相手に対してであったり、驚愕法といって、相手を驚かせてその瞬間に暗示を入れるとか、頚動脈を圧迫し脳に血液が流れなくして、暗示を入れるような危険な方法しかなかったのです。

 催眠に限らず、最初に道を開いていくことは難しくとも、後から教えを受けそれを体得することはいかにもたやすいことなのです。私は催眠のかけ方を習いにくる皆さんにそのように教え導いています。だから催眠の習得がいかにたやすいことかが、分かってもらえると思います。